人気漫画「進撃の巨人」が、9日発売の「別冊少年マガジン」5月号(講談社)で完結した。作者の諫山創さん(34)が11年7カ月にわたって同誌に連載し、電子書籍を含む単行本累計発行部数は、全世界で1億部以上の大ヒットとなった。ウェブ上では9日、最終話への称賛や諫山さんへの感謝の声であふれた。人を食べる巨人に挑む人類の絶望的な戦い。残酷にも見えるテーマの作品が、多くの人を魅了したのはなぜなのか――。【松倉佑輔、佐野格/デジタル報道センター】
サイトにアクセス集中
「進撃の巨人、終わってしまった……。諫山先生、本当にお疲れ様でした」
「興奮と感動の涙で訳分からん」
「今まで調査兵団をずっと応援し続けてきてよかった……ずっとずっと大好きだ」
「進撃の最終話やばすぎんよ」
9日午前0時、講談社の漫画アプリ「マガポケ」で最終話の配信が始まると、ツイッター上は読み終わった人たちの感想が急増。「進撃の巨人」「#進撃の巨人最終回」「諫山先生」「進撃最終回」「#進撃と私」といった言葉のほか「ライナー」「アルミン」といった登場人物の名前もネットでトレンド入りした。
少しでも早く最終話を読もうと、同社のサイトにはアクセスが集中。つながりにくい状態となり、マガポケの公式ツイッターは「サーバーをかつてない規模で増強して暖機運転までして待ち構えていたのですが、あっさり駆逐されてしまいました! 大変申し訳ございません!」と、「駆逐」という作中の用語も使って謝罪した。「別冊少年マガジン」5月号も9日、東京都内の書店では早々に売り切れとなる店が多かった。
著名人も反応している。女優の広瀬アリスさん(26)は9日朝、ツイッターに「ちょうど今、現場で進撃の話で毎日盛り上がっていて、今度みんなでスタジオの廊下で巨人ごっこしようって言ってたんだけど……最終回かあ。喪失感。諫山先生、お疲れ様でした。みんなで、全力で、巨人ごっこします!」と投稿した。
お笑いコンビ「NON STYLE」の井上裕介さん(41)も自身のブログで「ラストページが全てを物語っているような気がする。そして、最終回を読んだ直後から、また1話目から見返したくなる。そこが『進撃の巨人』の凄(すご)いところだよね。11年7カ月という期間、『進撃の巨人』には沢山の感情を抱かせてもらった。本当に面白かった‼ まさに伝説になる漫画の一つだと思う」と興奮気味に記した。
海外でも反響 180カ国・地域で配信
作品は海外でも反響を呼んできた。講談社によると世界21カ国・地域で出版。電子書籍は約180カ国・地域で配信され、単行本の累計発行部数は1億部(電子版を含む)を超えるメガヒット作となっている。9日も、ネット上では海外のファンから作品をたたえる書き込みが目立った。
多くの人たちを引きつける「進撃の巨人」は、主人公のエレン・イェーガー、ミカサ・アッカーマン、アルミン・アルレルトの3人の少年少女を中心に描かれる。人を食べる巨人の侵略に、壁に囲まれた街で暮らす人類が絶望的な戦いを挑むダークファンタジーだ。
当初は、正体不明の巨人への恐怖感や、主人公のエレンに近しい人間が被害に遭うといった衝撃的な内容で話題を呼んだ。そして、巨人の謎が明かされた中盤以降、物語が急展開。物語の視点が変わり、誰が敵で誰が味方か曖昧になる中、正義や善悪といった価値観が揺らぐ。人類破滅の足音が聞こえる中、登場人物たちの葛藤や行動が緊張感を持って描かれる。紛争や争いを繰り返してきた現実社会の歴史を想起させる部分も話題になった。
現代の社会に通じる物語
その人気の理由について、評論活動でも知られる漫画家のいしかわじゅんさんは「壁に囲まれた閉ざされた世界で外からの脅威におびえるという設定が、現代社会の『閉塞(へいそく)感』にも通じ、多くの人を引きつけたのではないか」と語る。巨人が登場するなど、これまでの漫画にない壮大な世界観。「大きな風呂敷を広げたなと思い、最初は設定や物語が破綻しないか心配になった」と言う。ただ、そのことが「先の展開の読みにくさ、破綻を恐れずに前に前に進んでいく物語の強さにもつながった」と評する。
細かく、面白く…驚きの伏線回収
作品は中盤からどんどん複雑になる一方で、序盤のセリフや設定などの“伏線”が回収されていく。いしかわさんは「細部に至るまで、一番面白い伏線の回収の仕方をしている。『これあり?』っていうような驚く展開も多かった。作者の意図なのか、偶然なのか分からないほど。ギリギリの綱渡りの中で完成した奇跡的な作品」と話す。
作者の諫山さんは、この作品がデビュー作。連載開始当初は、絵が粗削りという評価も強かった。いしかわさんも同意見だったが、「絵がうまくないことが、巨人の独特の『気持ち悪さ』の表現につながった」と分析する。物語では、どんなに悲惨で絶望的な状況でも、巨人と戦うエレンたちが強い意志で必死に生きていく様子が描かれる。「陰惨な話でもキャラクターがみんな前向きで言葉も強い。彼らの新たな希望が作品の魅力になっている」と語る。
約11年半に及んだ長期連載。いしかわさんは「一昔前なら、ここまでヒットした漫画は終わらせてくれなかった。続けようと思えばいつまでも続けられたはず。ただ、作品の完成度のため、作者の次のチャレンジのため、ここで終わるのは良かったと思います」と話した。
「いつでも僕たちの心を温めてくれるはず」
最終話の末尾、別冊少年マガジン編集部は「物語を通じて人と人が『言い表せない感情』を共有すること以上に価値のあることは無いように思います。連載は終了となりましたが、この記憶はいつでも僕たちの心を温めてくれるはず。ご愛読ありがとうございました」と読者に感謝した。
物語は完結したが、今後も話題は続きそうだ。単行本最終巻(34巻)は6月9日に発売される予定。アニメも放送・配信中で、エレン役を務める声優の梶裕貴さん(35)はツイッターに「アニメ『進撃の巨人』に心臓を捧(ささ)げ、エレン・イェーガーを演じ抜きます。オレたちの戦いはこれからだ!!!」と書き込んだ。
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